CZ-8RL1カセットデッキの修理メモ

ケースの分解と各ベルトの確認


分解清掃の前に、手袋をするか石鹸で手をよく洗うことをおすすめします。
ゴムベルトに手の油がつくと劣化が早まるそうですし、鉄板も手の油がつくと変色したりサビたりします。

鉄板は洗剤やアルコール等で清掃してもよいですが、後で防錆処理をキッチリやらないとサビを早めることになるので、筆者はブラシと掃除機を使って埃を除去した後、鉄板は触らずに樹脂部分だけウェットティッシュなどで拭き掃除をしています。

蓋の分解については、底の2本のネジと、背面の2本のネジを外すとカバーが外せます。



右下の基板をえぐった所にある円柱形のものがモーターです。カセットデッキのモーターは通常1つで、しかも動作時は常に片方向へ一定速度で回転します。
この一定速度の動力にプーリーやカム等を繋ぐことで、速度、方向、動き変換しています。こららの接続をソレノイドを使って電気的に切り替えています。
ソレノイド=電磁石で切り替えている事が電磁メカ制御とよばれる理由ですね。

中央の太いベルトがローディング用ベルトです。大きなプーリーはタイミング調整のフライホイールです。ここには問題がありませんでした。

大きなプーリーはタイミング調整のフライホイールで、その奥の黄色っぽいギアにつながります。ここがカムになっていて、円運動からヘッドの上下運動に変換しています。ここには問題がありませんでした。

ローディングベルトの右の白いプーリーにかかっているのはFF/REW/PLAY時のリール送りベルトです。ここは問題はありませんでした。ここが機能しないとFF/REW/PLAY動作すべてでリールを巻かなくなります。

左側のプーリーにかかっているのは、テープカウンター用ベルトです。プーリーに固着していましたが、手で外れました。
テープカウンターにはテープエンドセンサーもついているため、テープカウンターが機能していないとFF/REW/PLAYを行ってもすぐに停止してしまうようになります。

モニター再生音にガリ音がでる場合、下側中央下の水色のスイッチ3個の上の隙間に接点復活剤をほんの少しスプレーしてスイッチを何十回か動作させると改善 する場合があります。他に横のボリューム、左上奥の基板にあるMONITORスイッチの接点不良もガリ音の原因になります。

今回は不要でしたがローディングベルトを交換する際はモーターとモーター固定板を外す必要があります。上の写真の板金と前面ブロックを固定している2本のネジを外せば前面ブロックが分割できます。


写真は、採寸のために別の個体を分解したものです。
コネクタを外さずに鯖折りしていますが、気をつけないと配線が切れたりステーを曲げたり、ケースに傷を付けてしまいます。
ベルト交換は組み立て時に案外コツがいるので、慣れないうちはコネクタを全バラしたほうがほうが良いと思います。

前面パネルの分解


カセットカバーを外さないと作業性が悪く前方からのメンテナンスはできません。カバーは上の方向に引きぬくことができます。
奥の黒いパネルは、向かって右上のネジをはずしてから左上のフックを外側に押しながらパネルを手前に引きます。塗装面はあまり丈夫ではないので先のとがったピンセッ トなどを使う場合は気をつけます。取り付ける際、パネルを押すだけではフックはかからないようなので、フックを外側に押してパネルをはめます。

これで、前面のメカにアクセスできます。

中央左上側の白いギアが、FF/REW/再生プーリーからの動力です。このギアがREW時は向かって左側、FF時は右側に倒れてスプロケットを回します。

その右下にあるゴムリング付きのプーリーは再生送り用です。この写真ではゴムがひび割れてしまっています。

FF側リールに付いているベルトはテープカウンター用のベルトです。こちら側も固着していましたが手で剥がれました。

FFギアのグリス固着とクリーニング

この個体はFFリールホルダの左上にある黒いカウンターギアが固着していて全く動かなくなっていました。
グリスアップしたいところですが、ギアは樹脂パーツやゴムベルトや溶剤のケミカルアタックで割れることがありますし、ゴム駆動の部分は滑っては困ります。FF側のスプロケットはクラッチ構造になっているので、ここもオイルが入って必要以上に滑ると再生動作に動障がでます。
金属用の溶剤系オイルやグリス、飛散しやすく除去しにくいシリコン系、スプレーなどもは危険です。
そこでカウンタギアのシャフトと鉄板の間にラジコン用のドライテフロンを流して手で回しました。これでFF動作ではリールを巻く程度になりました が、まだ渋くて再生動作では問題があります。2時間以上慣らし動作をしても渋いままだったため、仕方なく直接分解して清掃を行ないました。

FFプーリーとカウンターギアは樹脂のカットワッシャー(Eリング)をシャフトの溝にはめて固定してあります。カットリングは切れ目から上に持ち上げると外れ ますが、無理な力をかけて変形させたり飛ばして無くさないように注意が必要です。代用品としてφ1.6xφ4.0x0.25mmポリスライダーカットワッシャーが使えそうです。
尚、REW側のプーリーはワッシャーにカットが入っていないので、簡単に外せないようでした。引っ張れば抜けるかもしれませんが、部品を壊した時の代替部品を用意していないため、今回は見送りました。



FFプーリーとカウンターギアを外すと、カウンターギアのシャフト根本に茶色い物体があり、軽くこすったくらいでは取れません。これでは外からテフロンを流したくらいではダメです。
最初はサビかと思いましたが、アルコールを染み込ませたウエスでゴシゴシこすったら綺麗に落ちました。固着したグリスだったようです。

その後、樹脂にやさしいグリス(タミヤセラミックグリス?)を塗ればよいですが、今回は手元に適当なグリスがなくドライテフロンを塗って組みました。
あとは、固定用のカットリングを上から指で押してシャフトの溝にはめれば終わりです。

ストッパーを手で解除したまスプロケットを手で回すと、サーと10回転以上回るようになりました。

ついでにREW側スプロケットも清掃しようかと思ったのですが、こちらはカットリングではないようなので止めました。

再生(PLAY)送り用ゴムリングの交換

いつも悩むのが、ゴムベルトやゴムリングの代替部品です。
見た目はCZ-800Cと同じように見えますが、厚みが異なるため同じ代替え品は使えません。
今回、またしても水まわり系のパッキンで、大きさの近いものを使いました。



内径が少し大きく、厚みが薄くて強度も弱いためか、再生時に少し偏ってしまいます。
FF側ギアとプーリーが渋いままだと、うまく動作しなくなります。

カセットデッキのゴムベルト関係の代替部品一覧

名称
純正部品(実測)
代替品
故障の症状、備考
ローディング用ベルト
折幅:100mm
切幅:4.5mm

問題なし
交換していない
早送り/戻しベルト 折幅:70mm
切り幅:1.2mm角

問題なし
交換していない
再生送りゴムリング

ゴムリング
内径10.5mm
外形16mm
厚み2.0mm


内径11.5mm
外形16mm
厚み1.6mm
たよりないけど、なんとかうごく。
ヘッドロード(再生)時、送り方向のスプロケットが回転しない。

CZ-800Cのものとは厚み違い
テープカウンタベルト
折幅:90mm
切幅:0.8mm角

固着していたが手で外れた